2012年12月1日土曜日

Dancin' in the High Heel Shoes

こちらの日本人の方が「よかった〜!」と言っていたので、ずっと見たくてうずうずしていたミュージカル。昨日やっとこ行ってきました… “Singin' in the Rain”


(「えーこんな旧い映画見てらんないー」という方は、2:25あたりを一瞬だけ見てください…理由は後で)

ジーン・ケリーの唄が有名すぎる、古典的名作ですね。正直、所詮はリバイバル…たかが知れてるでしょ?って思ってましたが、とんでもない、とてもとても魅せる舞台でした。唄とダンスが素晴らしい。ストーリー分かってるのは百も承知のうえで楽しめる作品ですね(途中観客も歌ってたし…)

ちなみに、ウエストエンドの舞台版ではなく原作映画を貼ったのは、演出のネタばれになると嫌だなと思ったからです。お時間のある方はぜひどうぞ(舞台に近い席がオススメです!全然オシャレとか必要ないので…っていうかしないほうがいいかも?)




ということで本日は、研究のことについて書きたいと思います(!)
いや、遊んでばっかでしょ?と思われても不本意なので…

現在、私が調べているテーマは

ダンサーがジャンプから着地するとき、
ハイヒールが下肢にどのような影響を与えるのか?

です(だからミュージカルなんですよっ)


ブロードウェイやウエストエンドでの統計から、ダンサーではなぜか女性の方が下肢の傷害リスクが高いということが知られていました(アクターでは男女差が見られない)。特に多いのが、足首の捻挫。理由のひとつとして、女性ダンサーはハイヒールのために足が底屈し、足首が不安定な状態になっていることが考えられました。

足首の捻挫で特に危ないのが、片足で着地したとき(上の動画で2:25あたりといったところ)。着地に失敗して、足首が内反して(要するに“ひねって”)捻挫してしまうというのが、スポーツでは最も多いパターンだということが知られています。ということで、現在「ハイヒールを履いてジャンプし、片足で着地した時」の状態を調べています。先行する研究があるので、それをより詳細に調べるという感じでしょうか。いまのところ「研究は踊る(文字通り)、されど進まず」…12月は何かはっきりした報告を出したいところです。

このテーマを選んだ理由は、おおざっぱに言えば解剖や整形外科的な「マクロな視点の研究がやりたかった」というのと「せっかくなので日本にはない研究がやりたかった」ということになるかと思います。「男なのにハイヒールぅ?」と、こっち来る前に少なからず疑いの目で見られましたが、不純な理由じゃないのです分かってください…まぁ別にいいんだけど!



研究室は、チャリング・クロスキャンパスの7階にあります(越野さんが同じビルの10階)。MSk Labといって、筋骨格系(MusculoSkeletal)関係の研究室が緩く繋がった感じです。研究テーマは相互に連携していて、セミナーや誕生会なども一緒に開いたりと、日本の「〜学分野 〜研究室」でいう「分野」よりはもう少し連携が強い印象。

多くの方が理学療法士のバックグラウンドをもつこともあり、ラボ全体としては歩行などの日常動作やリハビリ、そしてスポーツ医学が関心の中心となっています。特に今年は、ボスのマクレガー教授が聖火リレーでにこやかに走ったり、Team UK ボートチームの強化に取り組んだりしたこともあって、ある意味ホットだったかもしれない。

…ということで、ラボの人も水泳やボートなど、スポーツを愛する人が多いです。凄い人ではフィギュアスケートのジュニアチャンピョンだった人とか。今年派遣された学生の中で、唯一スポーツもダンスもしてない運動オンチとしては「あちゃー大丈夫かなー」と思いましたがいまのところ大丈夫…たぶん。



昨日は、Imperial Fringeという学内外の人に向けた研究紹介があったのですが、お題がちょうど"BONE"だったので、MSk Labの先生も講演していました。


後ろ姿は、骨のクオリティ(密度とか)の評価を研究されているリチャード・アベル先生。自然史博物館にもいたことのあるアベル先生は、人類がいつ二足歩行になったかについて、とても面白い話をしてくださいました。ルーシー(知り合いではない、Au. afarensisです念のため)の頃におそらく二足歩行になり、その結果として重い脳を支えられるようになり、同時に前足がフリーになったことで道具を使えるようになった(ことも、おそらく脳の発達に関連した)という話。それに対し、現代人はあんまり歩かないで、ずっと座ってるから姿勢が悪くなるけど、それで頭が支えられなくなってだんだん脳が小さくなったりしてね、みたいなジョークをマクレガー先生がかましてましたが。



ちなみに、話が変わるのですが、今日は世界エイズデー。昨日、地下鉄の車内では、インペリアルのRAG(Raising and Givingという寄付を募るサークル)が募金活動をしていました。見てると、乗客の3人に1人くらいは快く寄付していました。

“Singin' in the Rain”でも、終幕後にコズモ役のダニエルさんが出口での募金を呼びかけていました。「チケットが高いのは承知ですので、お気持ちだけで結構です!!ご想像ください、会場の皆さんが1人たった1000ポンド寄付するだけで…」には、またまたご冗談を、って感じでしたが。

お金で全て解決できるわけがないけれど、ゲイツ財団の方法のように、お金さえあれば解決できることだってあるのが事実。こうした寄付が、治療や研究に有効に活用されればと思います。