2013年2月3日日曜日

プレゼン道場


そういえば!とか言いつつ、だいぶ前(12月なんだけどね…)の話になってしまうのですが…こちらでお世話になっている若林先生からお誘いいただき、学生のプレゼンテーションを見てきました。Surgery & Anaesthesia(外科・麻酔科分野)で学ぶ医学科4年生、彼らの冬学期を締めくくるプレゼンです。

こちらのYear 4 (BSc) はプロジェクトセメスター同様,研究に携わる学年になります。ただ、実際のBScプロジェクト(研究)は2月の終わりからの10週間ということで、まだ始まっていません。いまはその準備期間となるカリキュラムで、今回のプレゼンテーションはその中間発表というかたちになるようです(当然、成績に加味されます)。今年最後の正念場…みんなバシッとスーツを着て、本気で発表に挑みます(そしてそのど真ん中、空気を読めずにダサいトレーナーで来てしまった自分、ってまた素敵な…)

3〜5人ほどの班ごとに、与えられたテーマに関してプレゼン。学生に与えられるテーマは(後に書きますが)いずれも最先端のトピック…中には未だにcontroversialで、結論を出し難いものもあります。それでも、どの班もよく論文を探し、読み込んでいるなぁという印象です。スライドには載せていない細かいところは口頭で説明し、「それは動物実験、それとも臨床研究?」「どういう方法を使ったの?」という質問にも、きちんと細かく答えていました…凄い。

それぞれの発表後、2名の教官からフィードバックがその場で返されます。評価者のお一人は本学出身で、インペリアルで麻酔科のトップをされている高田教授です。どの班もきちんと準備しているので、基本的には「よくできている」と好評価でした("confident"で"engaging"だ、とおっしゃってました)。多くの班が分担してプレゼンしていたのですが、先生方は一人ひとりの発表を細かにチェックして、「君のあのスライドはよかった」「ここはこのように提示した方がいい」と、サイエンスとしての内容、プレゼンテーションとしての形式の両方について、丁寧にコメントを返していらっしゃいました。



…で、なんでいまさら書くかってことなんですが、そろそろ自分たちもポスター発表があるし、書くんだったら今だろうなーって思ったからです。先輩が過去に書いてらっしゃるし、長々と同じようなことを書いたものかどうか躊躇っていたのですが、まぁ参考になるかもしれないので、やっぱり詳しく書こうと思いました(別に、変な出し惜しみをしていたとか、そんなんじゃないです…)。あと、ほら、最近ずっとゴミみたいなことばっか書いている反省の意味で、私をポイしないでくださいということで(笑



特にコメンタリーがとても参考になると思ったので、自分のまとめたものをのせます(注:先生のコメントと、自分の思ったことがごっちゃになっているので、まーこんなもんかー程度に見てください):



[全体の構成について]
  • 最初に、プレゼンのアウトラインを提示すると分かりやすい。
  • 分子機序,疫学,…などとセクションごとにテーマや視点を明確に分けるとよい。
  • 最後に、結論を再掲してまとめると分かりやすい。
    • あるいは、"Take Home Message"として、これだけは覚えてほしいっ!てことを簡単な一言・一文にするというのも、いいやり方だなと思いました。

[各スライドについて]
  • スライドの密度は適切に
    • あまりbusyにしない、でも空白が多いのも勿体ない…ということでした。個人的に、前者はよく言われていたのですが(以前に文字サイズ24 pt以上で!とか言われた)、後者はあまり気にしていなかったので参考になりました。これも、いかに限られた時間とスペースで、より多くの情報を分かりやすく伝えるか、という視点ですね(すげぇ難しく思えてきた…)
  • 1スライド1トピック
    • 例えば、1つの論文に特にフォーカスするというのは王道(その際は、例えばグラフなど、できれば定量的・具体的なデータを示す)。
    • ただし、あるグループは未だに論争のあるトピックについて、「結論は出ていない」みたいなタイトルにして、肯定的な結果を出した論文と否定的論文を左右に対立するかたちで列挙したところが評価されていました。要するに、いかに効率的に分かりやすく伝えるか、という点に尽きるんだと思います…それが難しいわけですが。
  • タイトルは分かりやすく
    • セクションごとに通しのタイトルをつけている班がありましたが、例えば1スライド1論文の場合なら、論文の結果をタイトルに持ってきたほうが分かりやすいこともあります。
  • スライドのどこについて話しているのか明確にする
    • 例えば、箇条書きなら、話しているところを一箇条ずつ表示させると見ている方も焦点が定まりやすいと思いました。
  • 参考文献を正しく適切に表示する
    • こちらは盗用・剽窃(plagiarism)に関して本当に本当に厳しく、参考文献を適切に表示していることが重視されます。例えば、1スライド1論文だったら右下に参考文献を出せばいいのですが、箇条書きだったら参考文献は各箇条につけなくてはならない(右下にごちゃっとまとめて示すのはダメ。どの部分がどの文献の引用なのかが分からないから)。
  • アニメーション・動画は無理をしない
    • アイコンなどをうまく使って、オリジナルのアニメーションを作るのは面白いのですが、いかんせん大変。下手なアニメーションで余計に分かりづらくなることも少なくないので、どっかの論文から分かりやすいシェーマをもらってくるだけでもOK。
    • 動画に関しては、本当に絶対にどうしても必要!!っていうのでなければ、基本的に避けた方がいいとのことでした(まぁ、往々にしてうまく再生されない ですよねー)
[あと、当たり前ですが]
  • 引用論文はきちんと読み込む
    • 上にも書きましたが、スライドには概要だけ書いて、細部は口頭で喋っていました。これがカンペなしなんですよねぇ…当たり前のことだと思うのですが、凄いと思いました。自分、ポスター発表でも間違いなく途中で突っかかると思うもん。


コメンタリーを聞いていて(繰り返しになりますが)内容と形式の両面から、本当に細かくフィードバックをくれるのが印象的でした。もっと、なんかハウツー本的なもので叩き込んで、結果としてパターン化されたプレゼンが供されるものと思っていたのですが、全然違う、柔軟に考え抜かれたプレゼンで、見ていて非常に勉強になったと思います。

最後に、おまけとして、発表されたテーマとおおまかな内容を載せておきます…F.Y.I.(タイトルは元通りではないし、内容もよく知らないものが多かったので、間違っているかもしれませぬ)

Eagle's DNA



こんなビール見つけました。鷹の遺伝子?…ではないんです。



ある冬の昼下がり、キャヴェンディッシュ研究所の職員たちがパブ『イーグルス』で食事を楽しんでいたときのこと。一人の常連客が店内に入ってきたと思いきや、興奮した様子で「重要な発見をした!」と話をはじめました。



彼の名はフランシス・クリック。これが、DNAの構造が初めて世に公表された瞬間だと言われています。1953年2月28日のことですから、もう60年経つんですねぇ…


というわけで、このビールはそれを記念して名前が付けられています。上の写真をよく見ると、鷹が二重らせんを掴んでるんですけど…分かるかな。

もちろん注文してみました。色が浅いっていうか、グラスに注ぐと赤みの美しいエールでした。苦みも弱く、あっさりとして飲みやすい(こんな話書いて大丈夫なんだろうか…でも明らかに20歳以上ですし、今日は日曜日だからいいよね…)



ちなみに、クリックが発見を公表したテーブルにはプラークがついています。あと、当時の写真もいくつか…小さいんで分かりづらいのですが、左下に飾ってある写真は、苦労して作ったという二重らせんの構造模型を二人で眺めている有名なやつですね。


一緒に写っているのは両親ですすみません、全然知らない人です(許可はとりました)。店内はかなり混んでいるので、この席を確保しただけでもかなりラッキーな人たちです(寒風吹きすさぶ中、私は外テーブルでした…)

右のお父さんは「携帯だと反射して撮れねぇ…」ってめちゃくちゃ撮り直していました。まぁ、私はちゃんとしたカメラ持ってったんで撮れたんですけどね(注:いやらしくドヤ顔で)


それにしても、オックスブリッジを歩いていると複雑な気持ちになります。ここで学ぶ学生はもちろん頭がいいんですが、それと同時にカネがかなり動いているなぁ…と。大学は保護者からの“ちょっとした善意”に支えられているようで、かなりのお金持ちです。どのくらい金持ちかっていうと、最大手スーパーの株を50%買い占めちゃうくらい。

地元の方からは「チャールズ皇太子がトリニティ・カレッジに入学する際には、エリザベス女王から“ちょっと”電話がかかってきたんだよ」なんて話も聞きました。本当かどうかは知りませんが、少なくともそういう風に見られてしまっているのはひとつの事実ですよね。



イギリス、本当に心から好きなんです。でも、こういうところは今でも心から大嫌いなところです。とはいえ、お金がないと研究成果も出ないっていうのも真実なんで、まぁ仕方ないんですけどね。そもそも外野から気に入らない!って言ったところで、none of your business だろ、って言われそう。